堺市は水道料金、大阪市の2倍の嘘

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維新の言う堺市は水道料金大阪市の2倍、堺市の行政が悪

大阪維新の会は「堺市は水道料金が大阪市の2倍」「それは堺の悪政のせい」ということをそこらじゅうで演説しているようであります。

5月20日撮影 維新の脱法選挙運動1

ひとつ象徴が水道代です。水道代、ほぼ大阪市と堺市は倍違うんです。たった大和川を挟んだだけなのに、ほぼ倍近くする水道料金を払っている堺市民。

そして一方、なぜか半額に近い料金である大阪市。なぜなのか?それは役所の違いなんです。

公務員を増やせば水道料金が上がるのは当たり前であります。我々維新の会は、必ずこの大阪市民並の水道料金に変えてまいります。これができるんです。

まず、この映像は選挙期間前に撮られたものであるそうで、違反の事前の選挙運動にあたる可能性があります。

次に大阪市と堺市の水道料金の差額に間違いがあるし、
そもそも維新が大阪市を担う前から大阪市と堺市は水道料金に差があり、維新の成果でもなんでもありません。

明治以来の国家プロジェクトとして大阪市の上下水道は国費を入れ整備されてきたのに対し、
堺市は自主財源で行っている差があり、
また大阪市は明治以来ですから既に上下水道完備なのに対し、堺市は整備途上であるいう差があります。
印象操作がすぎるというものでしょう。

堺市の水道料金は大阪市の2倍でもないし、決して高くも無い

水道料金についていえば、 堺市の水道料金ですが、大阪府内の全市町村中9位です。
府下平均よりむしろ安い部類の自治体なのです。

に堺市の水道料金が不当高いかのように市民不安を煽る選挙運動は卑劣 の一言であり、要は淀川という大水源があるなどの地理的要因などにより、大阪市がそもそも全国的にもトップクラスの安さというだけの話なのです。

このあたりの説明が、 森山ひろゆき衆議院議員のサイトに、堺市の水道料金が大阪市より高い理由と、そもそも別に高い部類でなく大阪市が地域事情で安くなる理由が説明されています。
WebArchiveにしか残っていず、「ノック前知事」とあることから堺市がまだ中核市時代の古い記事かと思いますが、基本的な構造としては今も通用する論理です。
あたかも大阪市が維新政治になって悪政のせいで大阪市と堺市に料金差があるかのように市民を煽るのは極めて悪質です。


市民から「堺の水道料金が高い」との苦情をうけることがおおいです。
どうやらお隣の大阪市と比べて格段に高いことから、このような苦情になっているようです。
平成11年4月現在の資料をもとに分析してみました。


大阪市10立方メートル:   997円(府内10位)
   30立方メートル: 3,318円(府内30位)
堺市 10立方メートル: 1,186円(阪南市につぐ府内2位)
   30立方メートル: 4,284円(府内14位)
※自主水源をもつ枚方市・守口市は安い

大阪市と比較すると高い理由は
1.大阪は全部市街地
  →堺は「調整区域」のこっている。
2.大阪は明治以来インフラを国家プロジェクトで推進
  →堺は自主財源で整備している。
3.大阪は自主水源「淀川」をもつ
  →「大和川」はつかいものにならず「大阪府」の水を買っている。
4.大阪は企業7:家庭3で企業が高く払っている
  →堺は企業3:家庭7で家庭にも負担大きい

http://web.archive.org/web/20100523161821/http://h-moriyama.jp/pages/profile/city/comment/water.html

今後の値上げリスクはむしろ大阪市にこそアリ

大阪市の維新の政治要因ではない水道料金の安さをもって成果とし、堺市政の悪政により水道料金が高いとネガティブキャンペーンをする維新。
大阪市の価格の安さを実現した維新であるから堺市も任せれば下げるというのです。

しかしこれは大きな欺瞞である。
なぜならば、維新施政で大阪市は値上げをし、堺市はその間、政令市初の水道料金値下げを実現している。実態は逆なのです。

今後の水道料金アップのリスクは、早期に水道管整備が進んでいた大阪市にはむしろ老朽化による耐用年数越え問題があり、今後の値上げリスクがともなうのです。


大阪市と堺市の上下水道管の老朽化率(27年度末時点)は以下のようになっています。

◆水道 40年以上(法定耐用年数)
堺 16%
大阪市 44%

◆下水道 50年以上(〃)
堺 5%
大阪市 31%

これらの今後のコスト増懸念は大阪市にこそある状況です。
堺市はあとから投資してきて現在値段が高いと指摘される部分もあるでしょうが(とはいえ府下では安い部類の自治体)、
そのぶん老朽化率は低いということで、そこでの将来負担増の懸念は大阪市より低いと言えます。

事実老朽化による事故が大阪市で頻発しています。

報道発表資料 東住吉区駒川3丁目の水道管の漏水事故について/大阪市
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/suido/0000380275.html
報道発表資料 阿倍野区阪南町5丁目の水道管の漏水事故について
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/suido/0000331843.html
古い水道管破裂相次ぐ / 読売新聞関西版(上記事故についての記事)
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/CO023571/20161204-OYTAT50006.html

破裂した管は61年前の埋設で、総務省令で定められた耐用年数(40年)をはるかに超えていた。大阪市の担当者は「これだけ古いと、いつ破裂しても不思議ではないんです」と申し訳なさそうに打ち明ける。
ここだけではない。上水道の歴史が古い同市では、水道管5200キロ・メートルのうち40年超が43・3%(2014年度)に達し、政令市で最悪だ。破裂 などの事故は毎年約200件あり、漏れて無駄になった水は15年度だけで約2400万キロ・リットル(約2億円相当)。全水量の6%に上る。

<ポイント>
・堺市の水道料金(2,484円)は、大阪市(2,073円)より少し高くなっていますが、大阪府内の平均(2,812円)より安い金額で、水道水を提供できています。
府下の市の順位では9位と、むしろ上位で実は安い部類というのは既報の通りです。大阪市と比較するのはミスリード狙いです。

・大阪市の水道料金が安いのは、水源である淀川に近く、浄水コストが安いためです。
加えて、大阪市では、企業などの大口使用者の料金を高くすることで、小口使用の料金を安くしています。

・大阪市の水道料金は現在、堺市より安いですが、戦前の国策での大阪市の上下水道インフラ整備から連綿と続く要素という話をしましたが、
結果大阪市では堺市に比べて古い水道管が多いので、今後は漏水や水道管更新にかかる費用増大のリスクが想定されています。

堺市と大阪市の水道事業経営の比較 。値下げ行ったのはむしろ堺市

2017年に堺市で配布された維新プレス号外堺特集号Vol.1では
・「維新の吉村市長は(良い経営を)やっています(料金を安くしています)!
…と、あたかも維新市政のおかげで大阪市の水道料金が全国トップクラスの安さであることを誇っていますが、またもや同じような主張を続けています。
そもそも維新市政以前からそうです。それは大昔からの国策としての整備と、淀川のおかげです

それでは、維新市政になってからの大阪市の状況を検証してみましょう。

大阪市の水道料金は、平成9年に引上げ改定して以降、据え置かれています。
つまり、橋下市長の就任後(平成23年12月~)、吉村市長の就任後(平成27年12月~)に、経営努力による水道料金の引下げを行っていません

大阪市の水道料金が低いのは、水源である淀川に近く、浄水コストが安いためです。(堺市は浄水処理事業を行っておらず、企業団から100%受水しています)。
加えて、企業などの大口使用者の料金を高くすることで、小口使用の料金を安くしています。
両市の水道料金の差は、水道事業の構造の違いによるものであり、吉村市長が良い経営をやっているからではありませんから、維新プレスの主張は話を盛っています。

また、水道事業の構造の違いがあります。水道施設の整備時期や人口密度などの社会的要因、水源からの距離や水質などの地理的要因、それを加味する必要があります。

さらに小口・大口料金の比較を見ると、大口では堺市のほうが安いという状況もあるようで一概に言える話ではありません。

<ポイント>
・大阪市の水道料金が堺市より安いのは、水道事業の構造上の違いによるもので、決して、「吉村市長が良い経営をやっている」からではありません。
・竹山市長就任後の堺市では、大阪広域水道企業団からの受水費の値下げを活用して、水道料金の引下げ(税込105円)を行いました。

下水道事業経営について、堺市と大阪市比較。前提条件が違った

2017年の維新プレス号外堺特集号Vol.1では
・「維新の吉村市長は(良い経営を)やっています(料金を安くしています)!
…と書かれています。

しかし事実ではありません
水道料金と同様で、大阪市の下水道使用料は、平成13年に引上げ改定して以降、据え置かれています。
つまり、橋下市長の就任後(平成23年12月~)、吉村市長の就任後(平成27年12月~)も、下水道使用料は据え置かれたままです。

少々専門的な話になってきますが、大阪市は下水道整備の時期が早く、合流式下水道を採用しているため、堺市と比較して当時の整備コストが低いのです。
そのため、大阪市ではその整備コストである企業債の償還や支払利息の負担が小さくなっています。
対して環境基準が厳しくなってからの整備事業である堺市の場合、負担はより大きいという事情があります。

大阪市は、大口使用者が多いため一人当たりの有収水量が多くなっています。
また、堺市に比べて水量ランク別料金体系の累進度が高いため、一般家庭(小口ランク)は安くなっています。

両市の下水道使用料の差は、下水道事業の構造の違いによるものであって、吉村市長が良い経営をやっているからではありません。

※合流式下水道と分流式下水道の違い
合流式下水道は、汚水と雨水を1本の管きょで排除する方式です。
一方、分流式下水道は、汚水と雨水を別々の管きょで排除する方式です。
合流式下水道は、布設する管きょが1本で済むので、分流式下水道より一般的に施工が安価になる傾向がありますが、降雨時に未処理下水が海や川に放流されるおそれがあります。

※なぜ堺市は分流式下水道を採用しているのか?
古くから整備を始めた都市は、その多くが合流式下水道で整備を進めましたが、下水道の普及とともに、河川等で未処理下水による汚濁が広がり、その対策が急務となりました。
そこで、昭和45年に下水道法が改正され、下水道の役割として、公共用水域の水質保全が位置付けられ、それ以降の下水道は分流式が採用されるようになりました。堺市も公共用水域の水質保全の観点から、市域の大部分で分流式下水道を採用しています。

それに加えて、美原町と合併し、下水道普及率の低かったところをほぼ100%にまで一気に整えた投資も下水料金に負担となってきました。
(合併時は普及率66.8%→現在は99.7%)




<ポイント>
・大阪市の下水道使用料が堺市より大幅に安いのは、下水道事業の構造上の違いによるもので、決して「吉村市長が良い経営をやっている」からではありません。
・堺市では既に、下水処理場の運営や管きょの維持管理の包括的民間委託が全国でもトップレベルで進んでいます。
・包括的民間委託と大阪市がめざしているコンセッション方式での運営で、事業運営の効率化の点で大きな差はありません。
堺市では、平成29年10月から下水道基本使用料を50円引き下げました。
・これは、市民の安全・安心を確保する事業を着実に進めるとともに、経営改善に取り組むことにより、平成32年度まで経営の安定性を確保できる見通しが立ったため、市民の生活負担を軽減すべく引下げを行うものです。
・美原区の下水道普及率をほぼ100%にまで整備すべく投資した影響があった。
・整備が大阪市より新しい堺市は、整備コストがこれまでかかっている反面、老朽化率では大阪市 31%に対し堺 5%、当面老朽化影響での値上げ懸念は薄い状況です。

大阪市で水が余っているから、それを使えばいいという短絡


日本維新の会の幹事長を務める、馬場伸幸・衆議院議員が2017年の堺市長選挙の期間中に演説で喧伝した
「大阪市は既に水が余っています。大阪市は40%近くの水を廃棄しているんです。捨てているんですよ」
というデマについて、平成29年10月3日に大阪市議会の公営・準公営企業会計決算特別委員会で取り上げられた。木下吉信大阪市議が追及した。市の職員より説明がありまこれは事実ではありませんでした。

(C)赤旗

田中柴島浄水場長
「水道局では過去一週間の給水実績を元に、気温や天候状況から翌日に必要となる水量を毎日予測した上で、需要変動を常にリアルタイムで把握しながら、需要に合わせた浄水処理を行っております。
またその際に必要となる、電力、薬品につきましても無駄の無いよう需要分のみを使用しております。」

田中柴島浄水場長
「水道局では日量合計で243万㎥の施設能力を有する浄水場におきまして、需要に応じた必要な水量を浄水しておりま して、平成28年度には最大給水量ベースで日量122万㎥に相当する水量を浄水したということでございます。したがいまして、この場合の余力であります121万㎥分を給水せずに廃棄したということではございません。

この馬場氏の発言は全く水道行政が理解できていないことを露呈しています。
捨てているなる事実誤認もさることながら、大阪市から堺市に水を持ってくる排水管が無く、ここが最もコストかかるところなのであって、
それを整備すればもちろん水道料金に上乗せされ高くなるはなしでもあり、短絡的に大阪市から水を持ってくれば安くあがるだろうというものではありません。

不当な水道行政の印象操作で市民の不安を煽るべきではない

以上、見てきたように、堺市の水道行政がきちんと更新し、経営努力もしてきていることは明らかであり
維新市政で大阪市が別段値下げしたわけでもなく、その水道料金を維新の成果かのように言うことは間違いです。

「なぜか大和川を挟んで水道料金が倍違う」などと、その価格差の理由(地理的、歴史的要因)も分からないような政党は、行政を担うレベルに果たしてあるのでしょうか?

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ファクトチェック堺
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