【寄稿記事】「都構想で堺がなくなる」について(堺市会議員・渕上猛志)

寄稿
     

先日、このようなニュースがありました。

世界最南端都市、チリのプエルトウィリアムズに変更

これまで世界最南端都市は、アルゼンチンのウシュアイアでした。それが変更ってどういうこと? 地殻変動でも起こった? これまでの測量間違い? 新しくまちを作った?

いえいえ、違うのです。プエルトウィリアムズが「Ciudad(=City =市)」に格上げされたのです。これまでも、プエルトウィリアムズが、「世界最南端都市ウシュアイア」よりも南にあり、一定の人が住んでいたわけですが、「市」でないばかりに、「都市」として認められてこなかったのです。「世界最南端都市」の称号を得たことは、プエルトウィリアムズの観光産業に大きなインパクトを与えるでしょうし、そうでなくなったウシュアイアは果たして今後どうなるでしょうか。

※余談ですが、私は20年前にウシュアイアに行きましたが、プエルトウィリアムズには行っておりません。よって、私は「世界最南端都市に行った」と言えなくなりました。無念。onz

さて、ここで私が改めて感じたのが、自治体として独立した「市」であることの重要性です。

堺が都構想に加われば、「市」ではなくなり、大阪府の「特別区」となります。そして、「東京23区」と各区が一括りにされるように、堺は多くのシーンで、「大阪●区」の、『その一部』として扱われることになります。

私たちが、例えば東京スカイツリーや浅草が、東京の何区にあるかはあまり知らないし、意識しませんし、また、報道でいちいち「台東区の浅草寺で」とはあまり言いません。それと同じように、世界遺産になった仁徳陵も、「堺の仁徳陵」ではなく、「大阪の仁徳陵」と表現され、そう認知されるようになることでしょう。

「堺市のシャープ本社では……」などというニュースも、「大阪の」という表現に変わるはずです(「横浜の日産本社」とは言うが、「港区のホンダ本社」とは言わず、「東京のホンダ本社」となるのと同様)。

例えば、「堺市はプロ用和包丁のシェアが90%」ですが、こうした調査統計も、堺市が市でなくなったら、他の自治体と並列して調査・比較してもらえる機会が、グッと減ることでしょう。

『大阪●区の、その一部』になった堺の存在を、世の中は、ましてや世界は、どの程度認識してくれるでしょうか。

これまでの「堺の〇〇」「堺市は〇〇」が、次々と「大阪の」「大阪は」に変わり、世間の認識から「堺」が薄れていき、そして私たちの堺市民としてのシビックプライドや、堺への愛着も、いずれ子や孫の世代では、薄れてしまうことだと思います。

独立した「市」でなくなるということは、そういうことだと思います。

プエルトウィリアムズが、市になることを返上したら、今回と逆で、「世界最南端都市」も返上することになるのです。

「堺がなくなる」という表現に、都構想推進派は、「まちが消滅するわけではない」「地名に『堺』は残る」などと反論しますが、そんなことは当たり前です。

私たちが「なくなる」と危惧するのは、世の中での「堺としての存在感」であり、そこから由来する「堺としての誇り」や「堺への愛着」、「堺のブランド力」なのです。

私は、「都構想になれば堺がなくなってしまう」と危惧しておりますし、少なくとも「薄れてしまう」ことは、間違いないことだと確信しています。

だから、私は「都構想No!」なんです。(他にも理由はたくさんありますが)

蛇足かもしれませんが、「特別区でも世田谷や新宿はブランド力がある!」という意見が返ってきそうですが、「独立した自治体(=市・政令市)」となれば、もっとそのブランド力は高まるはずです。もっと個性を発信できるはずです。知名度の高くない大半の区であれば、なおさらそうです。

なお、「市民の近くで行政サービスを提供する堺市」もなくなってしまいますが、そのことは、別の機会に書きたいと思います。

渕上猛志 堺市議会議員

寄稿
ファクトチェック堺
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