堺市は大阪都構想に組み込まれる危機を脱したのか?

記事
     

大阪都構想は、大阪市において二度までも住民投票が行われ、二度とも否決されました。
堺市もその先には組み込まれる話がありましたが、もうその話は終わった話なのでしょうか?
状況を検証してみたく思います。

維新の党是「大阪都構想」

大阪都構想とは、大阪市の都市計画権限や財源を府へ移管し、大阪市を分割の上、「特別区」という極めて権限・財源の弱い自治体制度に変えようと言う制度改革論です。
いわば、府に多くの権限財源を握られ、自治権を大きく失う制度です。
これは法律により住民投票で直接住民に判断を仰ぐ制度になっており、大阪市では二度も実施され、二度とも否決されています。

このように、創業者である橋下徹氏は、大阪市のみならず、堺市をずっと狙ってきた経緯があります。決して都構想が大阪市だけに収まる話ではないことが分かるでしょう。
また、維新の会としてのマニフェストから消えたわけではありません。きっちり党の公式サイトにあります。

お隣、大阪市で維新の市議会過半数。3度目の住民投票の可能性高まる

この春の統一地方選挙で大阪市では維新の会の大阪市議会の単独過半数が成りました。
つまり、議会で維新の一存でなんでも可決できる状況が既にできています。
そうなると、いつでも維新の一存で3度目の大阪都構想の住民投票を提案し、実施できる状況が既にあります。
これまではどうやって議会通すか?という多数派工作が必要でしたが、維新の好きなような案で実施協定書を作り、議会はスルー住民投票にかけることができてしまいます。
今まで以上に3度目の住民投票をやりやすい状況は整ってしまいました。

さらに、詳しくは後述しますが、維新の議員らはたびたび3度目の住民投票実施もあるとの発言を繰り返してきています。


「政令市は時代遅れの制度」「大阪都堺区」としていた永藤ひでき市長

現職の永藤ひでき市長は、大阪維新の会の府議時代から、熱心な都構想支持者でありました。

Twitterのプロフィールの住所欄を「大阪都堺区」とする当時の永藤府
政令市制度を廃止すべきという政治信条を語る永藤ひでき府議

御覧の通りで、永藤ひでき市長はプロフィールを「大阪都堺区」としたり
堺市の政令指定都市移行10周年記念式典に出て「政令指定都市制度は廃止すべき」と言ったりと
もはや政令指定都市を嫌悪というレベルの都構想の熱心な信奉者であることが分かります。

既に特別区になった自治体の、隣接自治体は住民投票省いて特別区化できる

大阪都構想(政令市を解体→特別区化)の根拠法は、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」(以下「大都市法」)といいます。
この法律の規定で、特別区化にあたっては住民にデメリットがありうるので、住民に投票させるというようになっているのですが、
例外規定があります。

それが、既に特別区となった自治体の隣接自治体は、「住民投票を省略できる」という事実です。

すなわち、大阪市で住民投票可決、大阪市が無くなり特別区に分割解体された場合、隣接する自治体を1つの特別区として組み込む際には、議会の議決のみで特別区化が可能となります。
つまり、堺市は住民投票無しで特別区化が行われる可能性があります。
少なくとも制度上は可能です

大阪市が住民投票で特別区に解体された場合、堺市は住民投票無しで特別区化が可能

これは法律・制度上は議論の余地の無い「事実」です。

住民投票どころか議会議決すら専決処分での特別区化も

先ほど特別区化において、「住民投票を飛ばして議決だけでいける」との説明をしましたが、反則とも言える方法として、議会の議決すら飛ばす可能性はゼロではありません。

それは議会の議決を飛ばし、市長の独断で進める「専決処分」の手法です。

これをやられてしまうと、もはや市長の一存だけでという話になります。
これは本来、どうしても必要な場合に自治体の首長が行いうるもので、連発するようなものでないイレギュラーなものですが、大阪府などでは維新の首長が連発してきた事実があります。

特別区化の通常の流れを説明しますと、府と解体される市の間で「特別区設置協定書」が作られ、それを議会で承認する必要があり、その後それの是非を住民投票にかけることになります。
隣接自治体の場合は、この最後の住民投票を省略できるのですが、さらにその前の協定書の議会承認を専決で飛ばせる可能性があるのです。

事実として、これをやることを検討していると大阪市の都構想議論において維新の関係者が示唆してきたとの報道がなされていました。。
上記の協定書の議会議決について、当時の大阪市議会は維新過半数ではなかったため議会で否決。住民投票に進めるところまでいけずにおりましたが、そこを「専決処分」で乗り切る可能性は制度上、あるのです。

橋下市長、専決処分を示唆 法定協へのボイコットを批判/朝日新聞 2014年7月2日

https://www.asahi.com/articles/ASG723R7LG72PTIL00B.html

大阪都構想の住民投票について、大阪維新の会には、来年春の統一地方選挙にあわせて実施できるように、松井知事と橋下市長が「専決処分」に踏み切るのではないかという見方が出ています。
大阪都構想の住民投票について、大阪維新の会は、大阪市を5つの特別区に再編するとしている平成29年4月に間に合わせるために、来年春ごろまでに実施したいとしています。
実施には、府議会と大阪市議会で協定書の承認が必要なため、松井知事と橋下市長は、9月の定例会に協定書を提出する方針ですが、自民党などの反発は強まるいっぽうで、承認が得られる見通しはたっていません。
このため、維新の会には、他党の協力が得られない場合でも松井知事と橋下市長が都構想実現を諦めることはないとして、住民投票を、来年春の統一地方選挙にあわせて実施できるように、法律にもとづく「専決処分」に踏み切るのではないかという見方が出ています。

朝日新聞
2014年7月2日

都構想で専決処分の見方も/NHK 2014年8月3日

http://www.nhk.or.jp/kansai-news/20140803/3479601.html(リンク切れ)
https://news.yahoo.co.jp/byline/watanabeteruhito/20140801-00037905/

大阪都構想の住民投票について、大阪維新の会には、来年春の統一地方選挙にあわせて実施できるように、松井知事と橋下市長が「専決処分」に踏み切るのではないかという見方が出ています。
大阪都構想の住民投票について、大阪維新の会は、大阪市を5つの特別区に再編するとしている平成29年4月に間に合わせるために、来年春ごろまでに実施したいとしています。
実施には、府議会と大阪市議会で協定書の承認が必要なため、松井知事と橋下市長は、9月の定例会に協定書を提出する方針ですが、自民党などの反発は強まるいっぽうで、承認が得られる見通しはたっていません。
このため、維新の会には、他党の協力が得られない場合でも松井知事と橋下市長が都構想実現を諦めることはないとして、住民投票を、来年春の統一地方選挙にあわせて実施できるように、法律にもとづく「専決処分」に踏み切るのではないかという見方が出ています。

NHK 
2014年08月03日

大阪都構想攻防 橋下氏 再提案、専決カードも 野党「議会軽視」批判強める /産経新聞 2014年10月18日

大阪都構想攻防 橋下氏 再提案、専決カードも 野党「議会軽視」批判強める(1/2ページ)
 大阪市を特別区に分割し、大阪府とともに再編する大阪都構想で橋下徹市長(大阪維新の会代表)が強硬姿勢を鮮明にしている。住民投票を実施するかを決める協定書の議案…

大阪市を特別区に分割し、大阪府とともに再編する大阪都構想で橋下徹市長(大阪維新の会代表)が強硬姿勢を鮮明にしている。住民投票を実施するかを決める協定書の議案について野党が否決の方針を決定したことに「住民に委ねず、おこがましい」と反発し、再提案する意向だ。橋下氏は劣勢の議会の議決を飛ばして住民投票に持ち込む「専決処分」のカードもちらつかせており、野党側は「議会軽視」と批判を強める。今月下旬に想定される否決後に、都構想の攻防はより激しさを増しそうだ。

産経新聞
2014年10月18日

崖っぷち橋下市長 都構想実現へ奇策 「専決処分」で住民投票/Zakzak 夕刊フジ 2014年11月7日

崖っぷち橋下市長 都構想実現へ奇策 「専決処分」で住民投票
 大阪市の橋下徹市長(維新の党共同代表)が窮地に立たされている。看板政策である「大阪都構想」の制度案が、大阪府・市両議会で否決され、存在意義が大きく揺らいでいるのだ。おひざ元で「維新包囲網」が強化されるなか、橋下氏が仕掛ける奇策とは。

橋下氏と大阪府の松井一郎知事(維新幹事長)は来年2月、都構想の制度案を再提出する構えだが、地域政党「大阪維新の会」の議席は、府・市両議会ともに半数に満たず、再び否決される可能性が高い。そこで持ち出したのが住民投票だ。
(中略)
野党が過半数を占める議会では否決される公算が大きい。そこで、橋下氏に近い維新関係者は次のようなシナリオを明かす。
否決されたら、橋下氏は議会の議決を経ない『専決処分』によって条例案を通す。専決処分には『議会軽視』『独断専行』といった批判がつきまとうが、今回は、住民投票を求める市民の願いを潰した議会側が“悪役”になる」

Zakzak 夕刊フジ
2014年11月07日

このような脱法的手法が取られた場合、堺市は隣接区であるため、住民投票はおろか、議会の議決すら飛ばされ、「市長の一存」ともなりかねないのです。
ですから、市長選択は堺市と都構想の関係を考えたとき、重大な意味を持つことになります。

「大阪都構想を4年の任期中は議論しない」とした永藤ひでき市長。しかし広域一元化は進めるとも。

4年前の選挙時に、永藤ひでき氏は都構想批判に耐えかねて「4年間の任期中は都構想の議論はしない」と言いました。

そして、4年が過ぎました。

今回の2023年の堺市長選では、野村ともあき候補との公開討論会において、
永藤ひでき市長は今後の4年間の都構想の向き合い方について「広域一元化は進める」と言い切りました。

2023年度 堺市長選挙公開討論会

大阪市では大阪都構想の住民投票否決を受け、広域行政一元化条例が成立。
政令指定都市にとって重要な権限であるはずの都市計画権を府へ移管。大阪市の都市計画を府知事が行うということが行われています。
永藤市長が推し進めようとしている大小路の改造なんかも堺市単独意思でできなくなるかもしれな話です。

それを問われ、永藤市長は公開討論会で「広域一元化を進めていく」と断言。

広域行政一元化条例は、「バーチャル都構想」とも言われ、都構想でやろうとしたことを事実上住民投票を経ずに進めようというものです。
それを進めると永藤市長は言っており、大阪市と同様に今後広域行政一元化条例が堺市でも成立する可能性があるのではないでしょうか。

大阪市では、独自の高校を作る、持つことすら放棄し、府へ大阪市立高校を土地含め無償で譲渡しています。
独自の市民ニーズに沿った高校を作るということは自治体の基本的な権限でして、村立学校だっていくらでも世の中にあります。
ところが政令指定都市なのに、大阪市はそれすら持てない、名ばかりの政令市になっています。

これについては、巨額の大阪市の財産を府へ無償譲渡することであり、市民にとっては大きな金銭的損失ですから、訴訟も起こっています。

「都構想によらない、事実上の都構想の内容の実施」が既にありうる状況であると言えます。

公約違反の永藤ひでき市長を信用できるか?そこが問題

永藤ひでき市長は、4年前の堺市長選挙で選挙区公約に「おでかけ応援パスの拡充」と訴えて選挙戦を戦い、市長に就任しました。

しかし当選するや、対象年齢の引き上げを提案。
二度までも議会に提案し、拡充とは真逆の縮小を狙いました。


これについては今回の公開討論会においても指摘され「苦渋の決断であった」とその公約破りを認めておられます。
公約について軽々しすぎやしませんでしょうか?

2023年度 堺市長選挙公開討論会

また、
永藤ひでき氏は、二度目の挑戦で堺市長選に勝ち、現在市長となっていますが、一度目に負けた後は政界引退する、したと繰り返しと述べておりました。ここでも前言を翻してます。

…からの

もちろん出馬することは国民に認められた権利ですから、それ自体は問題のあることではありません。
しかし、こうまで繰り返し決して政治家に戻ることは無いと言い切ってきた永藤氏です。「言葉の軽い人」との誹りはまぬがれないでしょう 。

さらに、維新の会自体の都構想関係を巡る言葉の信用ならなさという問題もあります。
大阪市において否決してもなお、二度目の住民投票が繰り返されたことは記憶に新しいところですが、3度目すら可能性のある状況です。

当時の橋下徹代表はこう言ってきました。
都構想の住民投票は「ラストチャンス」であり、一度切りと。

しかしご存じのように2度目の住民投票が実施されました。
市民の民意を無視したものといえます。

さらに、維新の議員らは3度目の住民投票を示唆する発言を既に繰り返してきております。
決して断念はしていないのです。

吉村氏 「大阪都構想」再々挑戦に含み 「選挙戦の中で“3回目をやってよ”という声も多かった」
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2023/04/10/kiji/20230410s00042000164000c.html

会見では都構想再挑戦について「現時点ではありません」としつつ「選挙戦の中で“3回目をやってよ”という声も多かった。4年間で何が起きるかは分からない」とコメント。「ただ、2回否決された。今の時点で(議論を)開始すると言うことではない。公約に掲げた(他の)ことから実行する」と説明。在阪局のネット特番でも「重要な改革とは思っている」「絶対やらないというわけではない」と“3度目挑戦”を否定はしなかった。

https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20221221-OYO1T50007/?fbclid=IwAR1aHAbpktEmsNGLjvfeb8yw_boys50ipbWcfBr1aNr0Nqopf302RbA252Q


大阪ダブル選挙で再選した大阪府の吉村洋文知事が10日、読売テレビの「かんさい情報ネットten」に出演し、大阪都構想の住民投票について3度目を実施する可能性に含みを持たせました。
吉村知事「多くの皆さんから(大阪)都構想、3度目やってほしいという声が多かったのは事実です。実際、多く聞きました。なかなか今、結論は出せないですけど、完全に否定するものでもないと思ってます」

https://nordot.app/1018096146145329152?c=459275984246867041

また、大阪市で新たに市長となった横山市長も、維新内の市長候補予備選において都構想再挑戦はすべきとの見解を述べております。
今すぐにではないというだけで、やはり住民投票の結果を受け入れるつもりではないようです

横山氏は党独自に市長選の公認候補を決める「予備選」を通じて、「都構想を目指すべきだ」と発言していた

https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20221221-OYO1T50007/?fbclid=IwAR1aHAbpktEmsNGLjvfeb8yw_boys50ipbWcfBr1aNr0Nqopf302RbA252Q

大阪市議会は維新の単独過半数となったため、市長の一存ですぐにでも住民投票はできる状況です。
またこの予備選においては横山氏は、まずは大阪市での合区を進めるべきとしており、先に合区を既成事実化した上で、住民投票再挑戦という流れも否定はできません。
その場合は合区は既に終わっているため、可決可能性は以前より高まるものと考えられます。
以前より、より堺市としてはシビアな問題になってきているのが大阪都構想です。


以上を踏まえて。



「堺市は都構想に巻き込まれないのか?」

もはやこれは「永藤ひでき」という人物を信用するか?という議論になってくるのだと思います。
少なくとも、「巻き込まれない」としても「今すぐには」でしかなく、その「今すぐには」すらも過去の前言撤回の数々を前に、信用ができるものなのでしょうか。ここをシビアに堺市民ひとりひとりが考える必要があるでしょう。
以前よりもさらに大阪市議会の状況を見たとき、切実な問題となったといえ、「既に終わった話」では決してないことが分かります。



記事
ファクトチェック堺
タイトルとURLをコピーしました