【堺市財政危機宣言はデマ②】堺市の基金枯渇はデマです

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永藤ひでき・堺市長が突如表明した「堺市財政危機宣言」
堺市は3年連続赤字であり、このままでは財政破綻するというのです。
その根拠として「3年連続赤字であった」「基金が無い」という主張がなされていますが、全くの事実に基づかない話であり、選挙イヤーに向けたパフォーマンスであると断じます。
野村氏の説明は時系列で矛盾を抑え、たいへん分かりやすいですが、さらに検証します。

財政調整基金が堺市にほとんど無い!って事実?実は基金全体では堺市はずっと基金あります

永藤市長は、財政危機宣言の根拠として、「堺市に財政調整基金がほとんど無い」ということを大きな理由としてきています。

財政調整基金とは自治体の貯金にあたるもので、その名の通り財政調整に使われるお金です。


令和2年度財政状況資料集
https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/zaisei/yosan_kessan_shushj/index.files/R2zaiseijyoukyou.pdf

ご覧の通りで、財政調整基金というものは基金のうちごく一部となり、減債基金が減って、財政調整基金に積み増しただけ
減債基金は起債に応じた額を適切に詰んでおり、単純に償還に応じて使われてるだけで、これは単に起債をあまりしてないでいるという状況を示してるにすぎませんので無視してよく
基金状況はほぼ横ばいで財政調整基金に新たに積んだというだけがここから読める要素です。

そして財政調整基金は確かに少ないものの、「その他目的基金」が堺市は大変多いことが分かります。

これは堺市の「基金積み立てのやりかた」で、基金の積み立て方は自治体によって個性が出ます。
財政調整基金として名目を付けずのお金を大きく積む自治体もあれば、
それぞれ名目事に小分けにして貯め、時の首長の勝手な運用を牽制するという方向性もあります。
堺市は後者の自治体であったということができます。

また、それぞれの基金は付け替えることもできますので、
単に財政調整基金以外の名目事に小分けにする方針なだけであり、決して堺市の基金残高が少ないという状況ではありません。


このR2の増減理由は同資料に理由が解説されています。

【基金全体】
(増減理由)
令和2年度は、以下の要因により基金残高全体が一時的に大幅に増加した。
・減収補てん債の発行や新型コロナウイルス感染症拡大に伴う事業中止・延期等に伴い、予定していた基金取崩しの一部が不要となった。
・財政調整基金へ令和3年度以降還付が必要である国費・府費の収入超過分を積み立てた。

(今後の方針)
○戦略的な活用を行う。
・社会・経済情勢の急激な変化等による収支悪化のリスクに備えるため、財政調整基金を積み立てる
特定目的基金の積み立て原資は、原則寄附金等とし、積極的に活用する。
・市有財産等の売却を行った際には、将来の整備や大規模改修等に備えて積み立てる。

【財政調整基金】
(増減理由)

○令和2年度は、令和3年度以降還付が必要である国費・府費の収入超過分20億円を積み立てたことや鉄道軌道整備基金からの積替え等により一時的に大幅に増加した。
(今後の方針)
○社会・経済情勢の急激な変化等による収支悪化のリスクに備えるため、積立てを行う。
令和2年2月に策定した「堺財務戦略」において、残高の当面の目標を100億円としている。

【減債基金】
(増減理由)

○令和2年度は、市債償還のための取崩し等(▲1,412百万円)により残高が減少した。
(今後の方針)
○今後の市債償還額を踏まえ、必要な残高を確保していく。

【その他特定目的基金】
(基金の使途)

○公共施設等特別整備基金
本市の公共公益施設の整備事業等の資金に充てるため
○泉北丘陵地区整備基金
本市の泉北丘陵新住宅市街地開発事業の施行地区(その周辺地区を含む。)における公共公益施設の整備事業等の資金に充てるため
(増減理由)
○令和2年度においては、以下の要因によりその他特定目的金の残高が減少した。
鉄道軌道整備基金を廃止し(▲3,386百万円)、残高については財政調整基金へ積替えを行った。
・東西交通整備基金の新設(+700百万円)
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う事業中止・延期等に伴い、公共施設等特別整備基金の取崩しの一部が不要となった(+142百万円)。
(今後の方針)
ふるさと納税などの寄附や計画的な基金の運用により、一定水準の基金を確保しながら継続的に事業を実施していく。
○令和3年度から令和12年度までの10年間を取組期間とする「堺市財政危機脱却プラン(案)」において、収入の確保のための方向性として、
「低利用・未利用の土地・建物は、積極的に売却・貸付し、収入を確保する」ことを掲げており、市有財産の売却で得られた収入について
は、令和2年2月に策定した「堺財務戦略」に基づき、将来の整備や大規模改修に備えて公共施設等特別整備基金へ積立てを行う。

簡単にまとめますと

・今後は特定目的基金ではなく、財政調整基金に多くを積むポリシーに変えます。

・国や府から得た補助金の類で、還付不要なものを財政調整基金に積んだ

・今後、特定目的基金は原則、ふるさと納税など寄付によるものとする。

・コロナ禍により事業中止・延期があり、使う予定が無くなった分の増

・ 特定目的基金である鉄道軌道整備基金を廃止し、3,386百万円を財政調整基金に付け替え

・減債基金は償還に伴い減っただけ。今後とも起債に応じて適正運用します


ということになっており、
堺市の基金運用ポリシーが変わり、目的基金より財政調整基金にまとめて貯めるポリシーとなったのです。 鉄道軌道整備基金をさっそく廃止し巨額の付け替えをしました。
その一方、国・府から得た補助金、要はコロナ関係の対策費の使い残しを財政調整基金に積んだ、ということかと思います。

実際にこの年やってるとおりで目的基金といえど、自由に必要なら付け替えて利用は可能です。
実際に永藤市長は 鉄道軌道整備基金 でやっているのですから、財政調整基金だけを切り出して「堺市には基金がぜんぜん無いんです!」というのはミスリード
です。

また、コロナで経済的にも苦しむ堺市民を助けることに国費、府費の補助金を使いきらず、財政調整基金に積むというのは、褒められる話ではなく、逆に糾弾されるべき事案ではないでしょうか?

また、「永藤市政が財政再建したから財政調整基金が増えた」という話でないことも明らかです。
国や府からのコロナ対策などの金の使い残しを財政調整基金に貯めたのと、鉄道軌道整備基金を廃止し3,386百万円を付け替えたことが大きな理由といえます。

投資家向けには基金の潤沢さをアピールする堺市の欺瞞

「堺市は財政調整基金でない名目で基金を貯め込んでいるだけで基金は少なく無い」この指摘はなにも批判派だけが言っているのではありません。

堺市は市債発行にあたり投資家に買っていただかねばなりませんが、その投資家向けの財政情報説明であるIR情報を確認すると、いかに堺市の財政が健全かのアピールをずっと続けております。
「堺市財政危機宣言」とは矛盾した内容がそこには並びます。

R3の堺市IR情報のPDF
https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/zaisei/irinfo/ir_event/74103520211125102023711.files/R3IRsiryou2.pdf

拡大しましょう。

実際の基金状況は「ほぼ横ばい」と言った状況です。
「積み立ては適正に実施している」と毎年この資料では投資家向けにアピールしています。
市民向けに「財政危機宣言」で永藤市長が言ってきた内容とは矛盾します。

既に述べてきたように、特定目的基金を減らし、財政調整基金に付け替えただけということがこのブラフからも見えます。

市民一人あたりの基金残高を見ても、決して少ない部類の自治体でないのは明白です。
さらにIR情報ではムーディーズの格付けもアピールしています。

堺市は「a2」となり、日本の地方公共団体では最高ランクの評価とか、
債務負担は他の政令市より低い水準とか、堺市の財政状況の良さをアピールしています。

堺市民と投資家、それぞれに違う主張をする永藤市長の欺瞞

堺市民向けには「堺市財政危機宣言」で基金が無いと主張。
他方、市債購入の宣伝をする投資家向けには「基金状況が良い」とアピール。

これはどちらかが「嘘」ということであります。

堺市民か、投資家か、どちらかを騙していることになります。
これは堺市民はもちろん、投資家に対しても大変に不誠実な態度と言う事ができます。

基金状況に関しましては、さすがに投資家向けに騙して市債を買わせたら詐欺ですから、きちんと基金全体の様子を説明している、説明するしかないのだと思いますし、
「財政危機宣言」における、財政調整基金だけを切り出した枯渇アピールこそが、嘘
なのだと思われます。
これは堺市民を欺く許しがたいことではないでしょうか。

堺市の基金は特別少ない状況にありません。
非常に一部である財政調整基金だけを抜き出した、永藤市長によるミスリードです。


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ファクトチェック堺
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