堺市「学校群」構想は教育環境をアップさせるのか?

記事
     

堺市では、現在「学校群」構想というものが進められようとしています。既に令和5年度からモデル実施となっています。
これは複数の小中学校で特別教室や体育館、プールなどを共用利用しようというアイデアです。
主にコストカット面が強調された案と言え、「学び」の環境アップとなるかは極めて疑問が残ります。
また多くの保護者が知らないままに拙速に進められようとしていることも、手続きとして問題があるのではないでしょうか。

野村ともあき候補は反対を表明しています

堺市「学校群」構想とは?

堺市で行われようとしている、小学校中学校を「学校群」と捉え、一貫教育の枠組みにしようという制度です。
小中一貫教育により「中一ギャップ解消」「個別最適な学び」など耳障りのいいことが資料には書かれる一方で、
コストカット論が数多く並びます。

すなわち、中学校と、その校区の複数の小学校を「学校群」と捉えることで、プールや体育館、理科室などの特別教室を一元化でき、施設更新費用を節約できるというのです。

https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/gyosei/shingikai/shichokoshitsu/kikakubu/sakaishisougoukyouikukaigi/kaisai_jyoukyou/reiwa3sougoukyouikukaigi.files/3_shiryou2.pdf

この「学校群」制度、このようなスケジュールで進んでいます。

今年、令和5年度からはモデル校を設定して実施していくというのです。
こんな話が進んでいることは多くの保護者はまだ知らないと思います。
実証実験は拙速ではないでしょうか?

児童はモルモットではないし、それで事故でも起こってからでは遅く、まずテスト実施の前に周知の徹底をし堺市民と話し合うべきだと思われます。

学校群制度の問題点①「移動の安全問題」

学校群制度が導入されると児童・生徒は各学校校舎を授業のたびに移動せねばなりません。
その安全確保は誰がするのでしょうか?危なくはないのでしょうか?
事故が起こってからでは遅い話です。

恐らく先生が児童を引率して、理科室使う、プールを使う、体育館を使う…といったたびに遠くの学校まで移動することになるのでしょう。
小さな児童を本来の学区外の遠い学校までいちいち引率し連れていくことは、児童の安全面を考えたときにどうなのでしょうか?移動中、目は行き届くでしょうか。

学区から出て遊ばないようにと児童の安全面から児童だけでの遠出を注意喚起したりしてると思うのですが、そういったものも恐らく形骸化し、崩壊するでしょう。
それに伴うリスクもまた覚悟しておく必要のある制度といえます。

学校群制度の問題点②「授業時間の減」

特別教室等を使うたびに別学校の理科室だの体育館だの使うようになれば、都度引率の先生と共に学校間を移動することになります。
これが日常になるのが学校群制度ですが、その移動時間は馬鹿にならないもので、年間でいえば相当な時間ロスとなるはずです。

隣の学校の校舎までみんなでとぼとぼ歩くとなると、想像すれば分かると思いますが、結構な時間です。
地域によっては小さい児童には難しい距離なんかもありそうです。

そして年間合計では相当な時間となる「学校間の移動時間」は、本来なら「学び」に使えたはずの時間です。
それだけ「学び」に割く時間が堺市の小中学生から奪うことになります。

これがはたして学力アップにつながるものでしょうか?
その時間を授業時間に割いた方が堺市の子供のためではないでしょうか

学校群制度の問題点③「避難拠点、防災拠点が地域から失われる」

学校は災害時の避難拠点であり、学校数をまとめて減らす案も今回ありますが、そうなるとその地域の避難拠点が無くなることを意味します。
また、体育館を複数校で共有し減らす話でもありますが、体育館は災害時に皆さんが避難して過ごす場でもあります。
各地域に公立学校があることは、防災上のメリットであるのです。

またプールに関しても、防火用水という意義があります。
消防法においてプールは消化用水として規定されており、それが地域に存在することは防災的意味があります。
また、災害時には生活用水にも利用されることがあります。

つまり、学校群制度で地域から体育館やプールが失われることは、地域の避難場所が無くなり、消化用水が失われるということです。
子供にもご老人にも、災害時は遠くまで歩いて行けということです。

地域事情にもよるでしょうし、必ずしも統廃合するなという話にはならないでしょうが、これは慎重にいろんな観点から議論すべき話なのだろうと思います。

学校群制度の問題点④「教員の過剰負担で教員補充がますます悪化」

まず大前提として、堺市は教員不足にあえいでいる状況です。
担任をする教師がおらず、延々交代で受け持ってという案件すら発生してる危機的状況です。

東洋経済 文科省が蓋をする「教師の非正規率」の衝撃実態
https://toyokeizai.net/articles/-/596089?page=2

非正規率は、自治体別に見ると大きな差がある(下の図)。最も高い堺市では2020年の非正規率が20%に達しているのに対し、北海道や名古屋市、新潟県は7%を切っており、実に約3倍もの開きがある。

https://toyokeizai.net/articles/-/596089?page=2

https://toyokeizai.net/articles/-/596089?page=2

なんと堺市では教師の非正規率は20%もで、全国でもワースト。なんと5人に1人が非正規で補充してるということですよ?
教員募集に困っている現状が分かります。

永藤市政で状況は悪化しており、堺市教職員への応募数は4年間で3割の減少。今年度当初の先生の欠員は53名

ここにさらに、「学校群」制度で、児童の他の学校までの引率負担が発生するのです。
確実に堺市への教職応募は減るはずです。
引率時の責任も負わされ、事故でもあれば責められるのです。教員資格を取った大学生が堺市をあえて選ぶでしょうか?
敬遠するものと考えられます。

堺市への教職応募は減じるのが必至。 現状の酷い状況がさらに悪化することが予想されます。
それはすなわち堺の「学び」の質の劣化に繋がります。
プランで描かれるような学びの向上にはならず、劣化となるのではないでしょうか?

学校群制度は絵に描いた餅。コストカットがその主要目的。

永藤市長は「子育てに力を入れる」と言いながら、明らかに学びの環境悪化に繋がる学校群制度に固執しています。それは子育てよりも緊縮財政に永藤ひでき市長の関心が傾いていることの証左ではないでしょうか。

https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/gyosei/shingikai/shichokoshitsu/kikakubu/sakaishisougoukyouikukaigi/kaisai_jyoukyou/reiwa3sougoukyouikukaigi.files/2shiryou1.pdf

「学校群」制度について、体育館やプールの維持経費や改修費用が無くなることが「考えられる財政効果」
とするだけでなく
「一体化による余裕教室(普通教室や特別教室等)の有効活用」が「財政効果」とは一体どういう意味なのでしょうか?
空いた教室を民間に有償で貸し出してビジネスでもする気ですか?

また「期待される教育効果」にある「教職員の相対的増加」とは?
ひとまとめにすることで教師が少なくて済み、堺市の教職不足が一見改善したかのように見せられるということでしょうか?

真面目に教職を増やし、きめ細やかな教育を子供に提供しようという姿勢でなく、
コストカットとごまかしで数値上の成果を狙っているだけで、そこに子供や親後さん、そして教員は見えていないのではないでしょうか。

そんなまやかしでは堺市の学びの環境は向上しません。
正攻法の地道な教員募集のための取り組みをまずは進めるべきではないでしょうか。




記事
ファクトチェック堺
タイトルとURLをコピーしました