「御陵を観覧車から見下ろそう」吉村知事の世界遺産への無知は遺憾

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バッファゾーンを知らない吉村府知事

「仁徳天皇陵の全景を見られるように観覧車を作りたい」
このような発言が知事から出ることには呆然とします。

以下はマスコミの報道です。

世界遺産勧告の仁徳天皇陵を見たい!ヘリコプター遊覧飛行に将来的にはタワーも検討 / スポーツ報知
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が仁徳天皇陵(大山古墳)を含む百舌鳥(もず)・古市古墳群を世界文化遺産に登録するよう勧告したことを受け、上空から古墳群をめぐる遊覧飛行クルーズの問い合わせが増えていることが14日、分かった。
(中略)
◆吉村府知事も言及「仕掛けが重要」
 吉村洋文・大阪府知事は14日、古墳群について「全容を目で見られる仕掛けが重要。アイデアとして、タワーや観覧車のようなものを検討したい」と述べた。7月に登録が正式決定すれば、地元の堺市などと協議して整備に乗り出す考えだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190514-00000251-sph-socihttps://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190514-00000251-sph-soci
(C)MBS

あまりにも百舌鳥・古市古墳群、そして世界遺産というものへの無知がここに露呈しています。
…といいますのも、世界遺産登録にあたりユネスコより求められるものとして
「バッファゾーン」、すなわち世界遺産とその周辺の緩衝地域の景観対策が求められるのであります。

高い建造物などは作れるものではなく、これはさんざん堺市議会では議論がなされてきたし、大阪府も入った誘致委員会でも議論重ねてきた話であるはず。

平成26年 6月16日産業環境委員会
勝真 世界文化遺産推進室次長
世界文化遺産に登録する資産と、その周辺を含めた景観の保全のために、緩衝地帯の設定が必要になります。
ことし4月に百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録推進本部会議において、本市と大阪府、羽曳野市、藤井寺市の4者で、緩衝地帯の範囲とその制限内容の方針が決定いたしました。
具体的には建築物の高さや形態意匠と屋外広告物等の大きさ等の制限内容となっております。
現在、百舌鳥古墳群の緩衝地帯の保全に関する説明会を、対象となる4区と対象となる9校区で6月末までの予定で実施しております。
7月以降、関係審議会や議会での議論を経て、平成28年1月の推薦書の提出に向けて手続を進めてまいっております


このバッファゾーンを知らないということは、これまで世界遺産登録の取り組みについて全くの無関心であったことを如実に示しています。
この地元調整に堺市や羽曳野市、藤井寺市はこれまで尽力してきたのでありますが、吉村府知事はバッファゾーンの存在すらお知りにならない。
話にならない世界遺産への無関心と言えようと思います。

仁徳天皇陵を電飾で飾れば世界遺産という松井一郎氏

思えば、松井前知事もそうでした。
松井氏は、仁徳天皇陵について、「仁徳天皇陵を電飾で飾れば世界遺産登録にプラス」ととんでもない趣旨のことを言っています。
以下は平成25年9月5日、堺市中区のソフィア堺で開催された大阪維新の会タウンミーティングにおけるパネルディスカッションにて。

松井一郎大阪府知事「仁徳天皇陵に電飾して世界遺産に!」

仁徳天皇陵、世界遺産にしよう。一緒に国に乗り込んでいきましょう、これだけじゃあ無理なんです。
仁徳天皇陵、魅力出すために、宮内庁どういうか分かりませんけども、一度イルミネーションで飾ってみようよ、中を見学してもらえるようにしようよ
いろんなアイデアを出して、はじめて指定される。
その話し合いにすら参加しない。そういう場に出てきてもらえない。出てきてもらえないなら話し合いできませんよ。

9月6日、堺市北区・堺市産業振興センターでのタウンミーティング、9月7日、堺市南区・栂文化会館でのタウンミーティングでも繰り返しこの御陵の電飾プランは松井一郎氏の持論らしく繰り返されます。

吉村氏、松井氏に共通するのは、世界遺産を観光ビジネスと思い込み、本意を理解していないことです。
この世界遺産という事業は、歴史遺産の保全事業です。決して観光ビジネスの話ではないのです。
その本来の第一の目的が理解できていれば、到底でてきえない話でしょう。

古墳ガイダンス施設は無駄なハコモノという永藤英機氏

永藤英機氏も同様です。
氏は世界遺産の古墳の「ガイダンス施設」を無駄なハコモノであるとし、2017年の公開討論会でも批判。

私も、世界遺産登録、熱心に府議会で応援をしてきましたので、ぜひ実現をしたいと思っています。
ま、その上で、私、世界遺産検定ももっていましてね、非常に勉強してきたんですけど、ハコモノ建設は世界遺産に関係ありません。世界遺産とは、あくまでもその価値であって、施設を作ることは影響しません。
今ある博物館を有効活用しながらですね、新たに30億円かけることなく、堺の魅力は発信できるはずです。
世界遺産登録とは、全く関係をしません。

この発言はガイダンス施設の位置づけについて、堺市議会などで議論されてきたことを永藤氏が知らないことを露呈しています。
「世界遺産検定も持っていましてね」などと世界遺産通を気取る前に、地元の議会をきちんと見てはいかがでしょうか?

平成28年度決算審査特別委員会-09月04日
勝真 世界文化遺産推進室次長:
この前の大綱質疑でも答弁させていただきましたとおり、ガイダンス施設はユネスコで選択された世界遺産条約第5条で、「全国的又は地域的な研修センターの設置又は拡充を促進し、及びこれらの分野における科学的研究を奨励する。」と規定されており、これを受けて日本の各地域の世界文化遺産においてもガイダンス施設が整備されているところです。

古墳のガイダンス施設とは、ユネスコ世界遺産条約第5条で設置が求められている施設であり、世界遺産登録へむけて必要とされているのです。

また、既存の博物館使えという指摘は、議会で維新会派が求めたことがあり、堺市博物館を指すものと考えられるが、堺市博物館にはスペースが無いことが議会で指摘されている

平成28年度決算審査特別委員会-09月04日
白神 学芸課長:
堺市博物館は、開館以来36年が経過し、設備の関係の老朽化が進むとともに、展示室が手狭となっており、特別展や企画展開催時には、常設展を一時的に撤去するなども行っているところでございます。また、(仮称)百舌鳥古墳群ガイダンス施設を設置するまでの暫定として、平成26年にはロビーに百舌鳥古墳群シアターを、休憩コーナーに百舌鳥古墳群展示コーナーを設置いたしております。このように既に一定の区画を転用しておりますので、現在以上に百舌鳥古墳群のガイダンス機能を付加することで、堺の通史を紹介するという堺市博物館の本来の機能を果たせなくなるおそれがございます。

また、平成24年第二回定例会にてこのガイダンス施設の内容を市側が提案、原案通り堺市議会は維新も含め全会一致で可決しています。
維新・西林議員も「そういうものをきっちり進めていただきたい」と言っている議事録が残っております。
そもそもこの計画案は、松井知事を会長とする百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録推進本部会議が文化庁に提出した推薦書原案に明記されているものです。
このような議会で既に行われたやり取りや、ガイダンス施設建設の経緯を永藤氏は知らなかったのではないでしょうか?
世界遺産検定はその程度なのですか?

世界遺産登録へ、ずっと無関心だった維新の首長

今になって「世界遺産登録は維新の成果」とばかりにアピールに熱心は吉村知事らですが、これまでの地道な取り組みにおいて、橋下知事、松井知事といった歴代の知事は冷淡であった事実があります。
2017年8月1日放送の大阪朝日放送の夕方の情報番組「キャスト」の中で、堺市の関係者の話として「誘致が決まるという段階になり、急に松井知事が出張ってきた」という旨の証言が報じられましたが、これは確かにそう言われてもしかたのない実態があります。

この世界遺産誘致活動は、大阪府、堺市、羽曳野市、藤井寺市が協力し、「百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録府維新本部会議」を設置し、誘致活動を行ってきました。
誘致活動の意思決定機関という、もっとも重要な組織体です。

この組織は、会長に大阪府知事が就き、本部長は堺市長、副本部長に羽曳野市長、藤井寺市長が就く決まりになっています。

この会議に、維新の知事はずっと出ず、副知事を代理として出していたのです。
橋下知事と竹山前市長はそもそも蜜月であり、松井氏らと維新を結党し、その後堺市解体をも掲げる都構想を打ち出すことによって両者は決裂したという経緯があります。

この時系列も織り込んで過去の会議を見直すと、決裂前は橋下知事は参加しているのに、竹山前市長と堺市解体を巡って決裂後、一切橋下知事は出ず、代理人として副知事を寄越していた。
松井知事になってもこの傾向は変わらず、常に会長職にありながら、本人は出ず、副知事を出してきていた。

なのに、突如出たのが平成29年3月29日の第16回会議。
他有力候補地が既に前年度までに世界遺産登録進んだなど候補地との兼ね合いもあって、推薦決定が現実味を帯びる中で、突然出席し、仕切りだしたのが分かります。

またこの松井会長が出席し仕切った回では、首都圏でのPR活動をするとし、予算がつけられた。
その後実際に古墳コスプレの写真で首都圏でラッピング電車を走らせるが、勘違いしたようなことばかりです。
(大阪の恥!山手線に不敬で下品な車体広告)

維新と竹山前市長の関係性の経緯も組み入れて、時系列で並べてみます。

平成21年9月 橋下徹府知事支援の元、竹山市長誕生
(当時の施策は府の縮小と基礎自治体への権限移譲の徹底)

平成22年4月 松井府議らと大阪維新の会設立。堺市を特別区へ格下げし府へ集権的な都構想を発表。
平成22年12月 竹山市長、都構想への反対を表明

平成23年5月12日
第1回
 会長:橋下徹(大阪府知事)
本部長:竹山修身(堺市長)
副本部長:北川嗣雄(羽曳野市)、國下和男(藤井寺市長)

平成23年6月 橋下知事、竹山市長との「絶縁」を宣言

平成24年4月12日
第2回
会長代理:木村 慎作(大阪府副知事)
本部長:竹山修身(堺市長)
副本部長:北川嗣雄(羽曳野市)、國下和男(藤井寺市長)

平成24年6月27日
第3回
書面決議で決済

平成24年9月 堺市長選。堺市の解体を掲げる維新vs堺市存続を掲げる竹山で、竹山勝利

平成25年3月25日
第4回
会長代理:綛山哲男(大阪府副知事)
本部長:竹山修身(堺市長)
副本部長:北川嗣雄(羽曳野市)、國下和男(藤井寺市長)

平成25年6月28日
第5回
書面決議で決済

平成25年11月26日
第6回
会長代理:小西禎一(大阪府副知事)
本部長:竹山修身(堺市長)
副本部長:北川嗣雄(羽曳野市)、國下和男(藤井寺市長)

平成26年4月14日
第7回
会長代理:小西禎一(大阪府副知事)
本部長:竹山修身(堺市長)
副本部長:北川嗣雄(羽曳野市)、國下和男(藤井寺市長)

平成26年5月30日
第8回
書面決議で決済

平成27年3月19日
第9回
会長代理:小西禎一(大阪府副知事)
本部長:竹山修身(堺市長)
副本部長:北川嗣雄(羽曳野市)、國下和男(藤井寺市長)

平成27年6月10日
第10回
書面決議で決済

平成27年8月24日
第11回
会長代理:小西禎一(大阪府副知事)
本部長:竹山修身(堺市長)
副本部長:北川嗣雄(羽曳野市)、國下和男(藤井寺市長)

平成28年2月17日
第12回
書面決議で決済

平成28年5月20日
第13回
会長代理:新井純(大阪府副知事)
本部長:竹山修身(堺市長)
副本部長:北川嗣雄(羽曳野市)、國下和男(藤井寺市長)

平成28年5月20日
第14回
書面決議で決済

平成28年8月24日
第15回
会長代理:新井純(大阪府副知事)
本部長:竹山修身(堺市長)
副本部長:北川嗣雄(羽曳野市)、國下和男(藤井寺市長)

平成29年3月29日
第16回
会長:松井一郎(大阪府知事)
本部長:竹山修身(堺市長)
副本部長:北川嗣雄(羽曳野市)、國下和男(藤井寺市長)
(議題:首都圏でPR活動をするとし、予算を付ける)

平成29年5月11日
第17回
書面決議で決済

平成29年6月
古墳コスプレのラッピング電車が首都圏で走る

平成29年8月1日
国内推薦決定

…と、このように竹山前市長との関係性から、維新の大阪府は誘致活動にずっと冷淡で、本来誘致委員の会長であるはずの府知事が全く出てこず、副知事をずっと代理として出していました。
それが国内推薦いざ決まるとなると松井知事が突如出てきたという経緯になります。


にも拘らず、既に動画であげました「仁徳天皇陵を電飾」の維新のタウンミーティングでは、「堺市長が世界遺産誘致ための話し合いの場に出てこないので進まない」と、
真逆のアピールをしているのですから、堺市民を欺くのもいいかげんにすべきです。

世界遺産への畏敬や文化保護の観点がなく、観光ビジネスばかりの間違い

松井一郎氏、吉村洋文氏、永藤英機氏、すなわち維新の会に通底するものとして、観光ビジネスによる金儲けの視点ばかりで、文化への理解が浅いように思われます。

世界遺産の目的がなんなのか?その根本から理解できていないとしか思えない発言の数々を彼らはしてきています。


JC主催の公開討論会では、司会より百舌鳥古市古墳群の世界遺産決定を前提に、観光戦略をはじめとした経済戦略をそれぞれ語ってもらうというテーマを問われて、野村ともあき氏は
これらと全く逆の立ち位置を述べています。

まず世界文化遺産登録は観光地作るためのものではないとバッサリ。
さらに観光産業は極めて足腰の弱い産業であるので、これが経済成長戦略というのは極めて不適切とさらにバッサリ。

基幹産業とは景気の影響を受けにくい足腰の強い産業を政令市権限を活かし誘致をし育てねばならないと骨太の主張をしています。

2019年【堺市長選挙】公開討論会その2

野村ともあき

まず最初に2点お断りしておきたいことがございます。
まずひとつは百舌鳥古市古墳群の世界文化遺産登録は観光地を作るための目的ではございません
人類普遍の財産を将来に渡って残すための取り組みですので、これは観光地を作ってるのでございません。
それからもう一つは観光が成長戦略としては非常に足腰の弱い産業であるという点でございます。
昨年台風21号が起きたときに関空の連絡橋が非常に大きな被害を受けました。
海外からのインバウンド需要が全く無くなり、難波や梅田はほんとうに閑古鳥が鳴くような状態でございました。経済が大ダメージを受けたわけでございます。
このように外からのお金に頼る観光戦略というのは経済成長戦略としては極めて不適切であるという持論を私はまず持っております。
そのうえで、経済成長戦略として必要なのはやはり地元に産業を根付かせ、足腰の強い景気の影響を受けにくい基幹産業をしっかりと作っていくことが私は重要であると考えております。
堺市の強みを活かした産業をしっかりとこれから根付かせていく。
私は、日本を支えるような大きな基幹産業、例えば愛知県にある自動車産業、あるいはカリフォルニア州にあるIT産業。こういった国を支えるような基幹産業を堺市に根付かせていきたい、あるいは生み出していきたいというように考えております。
具体的には新たにこれから生じつつある、新しい技術革新を積極的に取り入れ、それから先進企業を誘致し、そのためのインフラを政令市指定都市としての権限を活かして、堺市が整備をし足腰の強い経済を、堺市の地域の中に私は作り出していくことが、もっとも有効な経済成長戦略であるというように考えております。

この、野村ともあき氏の世界文化遺産への認識はまったく正しい見解です。
観光地を作ることが世界文化遺産の目的ではないのです。
観光だよりでなく、モノづくり町としての堺を骨太に訴えるあたりは、保守政治家らしいしっかりした国家観を持っているように思われます

それに対し「観光が水物とは恐ろしいくらいの時代遅れ」と噛みつくのが、堺市選出でもある、維新の馬場幹事長である

公開討論会の中でも、観光産業をやるなというのではないとしたうえで、
観光産業というのはGDPに占める割合は2%に過ぎず、関空の災害で露呈したように外国頼みの産業は極めて脆弱であり、これは国家の基幹産業足り得ないと野村ともあき候補に根拠も既に指摘されていることであります。
外交関係でもすぐに閑古鳥になりえますし、外国に依存しそれに振り回される国家というものはたして、国家観として適当なのでしょうか?


昨今は、「環境公害」なんて言葉も出てきて、行き過ぎた観光産業依存は住民を幸せにしないとも指摘があります。
この手の観光産業一辺倒な昨今を批判する報道もここ1年程で多くでてきています。

住民を駆逐する? 京都・大阪「インバウンド地獄」の実態
https://wpb.shueisha.co.jp/news/society/2019/05/21/108912/

このような状況についてこれていない維新・馬場伸幸幹事長こそ「時代遅れ」なのではないでしょうか

記事
ファクトチェック堺
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